2014年5月24日土曜日

【法案】過労死等防止対策推進法案の衆院委員会採決

 平成26年5月23日の衆院厚生労働委員会において、過労死等防止対策推進法案が委員長提案され、採決されたとの事。本通常国会内での成立目処がついたようです(yahooニュースはこちら)。

 報道によれば、同法案は過労死や過労自殺を社会の損失ととらえ、国の責任で防止対策を実施するよう促すとしており、具体的には①過労死の実態の調査・研究、②国民の関心と理解を深める啓発、③相談体制の整備、④民間団体の活動支援等が盛り込まれ、さらに地方自治体、事業主の協力、11月の啓発月間などが規定化されているようです

 法案の内容を確認しようと衆院HPを見ると、各党調整を経て委員長が上程したもののため今時点では未登載です(来週早々にはUPされるかと)。ちなみに衆議院提出法案を見ると、「過労死等防止対策基本法」がありますが(泉健太衆院議員(民主党)ほか提出)、法案のタイトル(「過労死等」→「過労死」、「基本」→「推進」)および法案内容が修正されているようで注意を要します(参考までに泉議員提出法案はこちら)。

 例えば泉議員提出法案では、対象とする「過労死等」について「業務における過重な身体的若しくは精神的な負荷による疾患を原因とする死亡(自殺による死亡を含む。)又は当該負荷による重篤な疾患」と定義していました。

 これが日経新聞報によると、採決された法案(過労死等防止対策推進法案)では、同法が対象とする「過労死」を「業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患や精神障害を原因とする死亡や自殺」と定義づけたとの事(こちら)。

 過重労働による重篤な疾患はさしあたり同法案の定義する「過労死」から外れることになります。この点、与野党間の調整経緯は分かりませんが、「重篤な疾患」の定義が難しく、同文言を見送った可能性があります。

 ただ産経新聞報(こちら)では、同法における調査研究では定義外のものも含めて幅広く取り扱うとしており、過重労働等による「重篤な疾患」の取扱いなども成立後の法施行に委ねられているものと思われます。

 思うに過労死の防止対策として、企業等の「過重労働防止」はもちろんですが、国民(従業員とその家族含めた)への意識啓発もやはり重要です(上記②)。また産業医はもちろん、従業員を実際に診療する開業医・勤務医の先生方はじめ地域の医療体制等は、今後ますます「過労死防止」のキーマンとなることが期待されうるものと思われます(上記③、④)。

 過重労働防止対策とともに、国民への啓蒙活動や地域の医療等を含めた産業保健の充実に、本法案が寄与することを願うものです。


(追記 2014.5.27)衆議院HPに過労死等防止対策推進法案がUPされました(こちら)。これを見ると、第2条の定義規定において、次のとおり定められています。「第二条 この法律において「過労死等」とは、業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害をいう。」。

 同定義規定のみについて言えば、泉議員提出法案よりも、「過労死等」に該当する範囲は広がったものといえそうです。なお同法案は、本日(5月27日)の衆院本会議に上程されました。

0 件のコメント: