2014年5月18日日曜日

読書「賃金差別を許さない」(中窪裕也訳 リリー・レッドベター他、岩波書店)

 アメリカにおいて「平等賃金の祖母」とも称されるリリー・レッドベッター女史の自叙伝を、アメリカ労働法研究の第一人者である中窪裕也一橋大教授が訳した本です(こちら)。

 アメリカ合衆国は、我が国やフランス、ドイツ等と比べると、労働法の規制が弱い(典型例が解雇規制の程度)ことで有名ですが、他方、性別等を理由とした差別規制が厳しいことはよく知られています。ただ、その運用実際のイメージが掴みがたかったところ、本著は巨大企業において現場監督として長年働いてきた女性が、定年間近に男性社員と比べ著しい賃金格差が生じていたことを知り、賃金差別訴訟を1人で争ったことが克明に描かれています。結果的に連邦最高裁で同氏の敗訴が確定しますが、その後、マスコミや議会を動かし、オバマ大統領が就任後、初めて署名した法律〜リリー・レッドベター公正賃金復元法〜に繋がっていくものです。

 まず本書はアメリカ労働法、とりわけ差別規制について知りたい方には最適の本といえそうです。また中窪先生の名著「アメリカ労働法(第2版)」(弘文堂)の副読本としても優れています。

 アメリカ労働法に関心がない方でも、リリー女史の半生の描写はとても魅力的で、引き込まれるものと思われます。恐らくハリウッドも虎視眈々と映画化を狙っているところかと(笑)。

 

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