2012年1月11日水曜日

パート厚生年金適用拡大の方針について(日経記事から)

今朝の日経新聞(2012.1.11)にパート社会保険適用拡大(厚労省案)が報じられています(こちら)。


厚生労働省は社会保障と税の一体改革素案に盛り込んだパート労働者の厚生年金・企業健保への加入拡大で、当面は従業員300人以下の企業で働くパートの適用を猶予する方針だ。中小企業の保険料負担が急増しないよう対象者を絞る。300人超の企業でも対象者は月収9.8万円以上に制限する激変緩和措置を検討する。


政府は厚生年金・企業健保の加入条件を週30時間以上労働から20時間以上に緩め、約400万人のパート労働者を国民年金国民健康保険から厚生年金・企業健保に移す目標を掲げている。一体改革関連法案に盛り込む方向で、2015年度までの実現を目指している。(以下略)


 余計な一言を言わせていただければ「大山鳴動して鼠一匹」といったところでしょうか。当初はいっきょに400万人ものパート等を社会保険適用拡大するとの意気込みでしたが、次第にトーンダウンし、結局は自公政権が提出した年金一元化法案と同じく、300人以下の中小企業適用除外、対象者の月収9.8万円以上となるようです。適用対象者も数10万人に留まる見込みとの事。若干、平成19年法案と変わるところがあるとすれば、雇用保険法改正に合わせて、適用対象者の勤務期間が1年から31日に短縮される点などと思われます(平成19年当時の法案資料はこちら)。


 問題は同案による適用対象事業場・労働者の具体的範囲です。パート比率が高く、業界挙げて反対の声が根強い商業・外食などのサービス産業について考えてみると、1店舗あたりの社会保険適用対象者数だけ取り上げれば300人を超えるような事業場は少数と思われます。したがって、大規模小売店舗を除くと、これらサービス業の大半は適用から外れるようにも見えます。
 しかしながら、企業全体でみれば、優に社会保険適用対象者が300人を超える会社が多いところ、この点をどのようにカウントするのか。先の日経記事でも「300人以下の企業」と記載されており、労働者数のカウント方法が定かではありません。今後の実務対応上、最も重要な解釈問題といえます。さしあたり参考になるのが平成19年法案の資料ですが、中小零細企業の適用除外に係る記載の中に以下の注が見られます。
  「現在厚生年金の適用対象とされている従業員の人数で算定」


 まず本社・各店舗含めて、社会保険の一括適用事業場としている場合は、ねんきん事務所等の管理においても、当該企業全体の適用対象者数を合算していることからも、これが300人超であればさしあたり適用対象となりそうです。
 これに対して、社会保険の一括適用を行っていない場合はどうか。本社、各支店がそれぞれ独立した人事労務管理を行っており、社会保険手続き等も各々でなされている場合は、さしあたり各事業場(店舗)ごと300人以下か否かで適用対象か否か判別するのが現行実務に沿ったもののように思われますが、「企業」概念からみて違和感も生じるところです。この点について、厚労省がさらに踏み込んだ解釈運用を示す可能性があるかどうかが大変、注目されるところです。


 まず何よりも法案提出がされるのか、提出されたとして通常国会で可決成立するか。何らかの修正が国会において入るのかどうか。いずれも現状の情勢から見ると全くの未知数といえますので、当分は模様眺めが続きそうです。

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