2011年8月31日水曜日

社会保障と税の一体改革 by 細川厚労大臣

 内閣総辞職により、細川氏も厚労大臣を辞任されました。前大臣と比べ、手堅く確実に厚労行政を進めていただいたのではないかと感じております。1年間、誠にお疲れ様でした。ところで閣議後記者会見で「税と社会保障の一体改革」について次のとおりコメントしています(こちら)。

(記者)
 それから先程触れられました社会保障と税の一体改革、新体制でどう実現するかが問われていると思います。民主党の中には、消費税引き上げについて非常に慎重な意見もまだ根強くありまして、国の借金、次世代への先送りで社会保障制度がやっと維持されているというような現状への危機感があまりないように見受けられるんですけれども、今後、社会保障と税の一体改革をしっかりと実現していくためには、大臣としては何が必要だとお考えですか。
(大臣)
 私はこの間、社会保障と税の一体改革の議論をしてまいりまして、それについては、財務の関係をどう手当をしていくかということが大変重要な問題だったと思います。それについては消費税でしっかりやっていくということも、この成案の中にはありますし、そしてこれが進んでいくという風に思うのは、新しい総理が野田財務大臣でございますから、この社会保障と税の一体改革については、野田新総理は間違いなくしっかり進めていくということでございますから、ここは、厚生労働省も一体となってこれを進めていくと、特に工程表を着実にこなして、法律をつくっていくということが大事かと思っています。その時に国民のみなさんに出来るだけ詳しく色々とお話をさせていただく、国民のみなさんにお知らせをするということが大事だと思います。そういう工程表に従って、社会保障の改革を進めていく、それには、財源が必要だと、それを国民のみなさんに負担をしていただくということをこの法案を作る時など本当にあらゆる機会を通じて国民のみなさんに社会保障そのもののどういうところを改革していくのかということをよくお知らせをすることが大事だということを、説明して納得していただく。そしてそのためには、消費税の引き上げについて理解していただくということになろうかと思います。
(記者)
 大臣は今後、閣外でも協力していきたいとおっしゃいましたけれども、この社会保障の改革では今後どういったことをやっていくお考えでしょうか。

(大臣)
 これは多分党内あるいは国会でのいろいろな法案に対する対応というのが、これから大きな課題だろうと思います。そういう意味で、厚生労働省を離れましたら、民主党の中あるいは国会の中での対野党との関係などについて、色々と私なりに出来ることをしっかりやっていきたいと思います。 


 9月から12月までの4ヶ月が同改革案策定の正念場ですが、様々な利害が交錯する中で舵取りができるのかどうか。野田総理の手腕がまさに問われるところでしょう。

2011年8月30日火曜日

民主新代表と「税と社会保障一体改革」

 昨日、民主党新代表に野田氏が選出されました。人事労務畑ではさしあたり「税と社会保障の一体改革」の動向が注目されるところです

 野田氏は「税と社会保障の一体改革」(閣議報告)のとりまとめの際、財務大臣を務めており、同策定に深く関与しています。他の候補が選出された場合、同改革案が棚晒しとなる可能性もありましたが、野田氏が代表、新総理に選出されることになったため、今後は同氏のかわら版(こちら)のとおり「このような改革の実現のためには、立場を超えた幅広い議論の上に立った国民の理解と協力が必要です。今後は、この成案に基づき、野党各党に社会保障改革のための協議を提案していくことになります。」が焦点となってくるのでしょう。

 毎日新聞が早速、同問題について情勢分析を行っており、参考になりました(こちら)。

2011年8月26日金曜日

社会保障審議会年金部会の始動

 本日、厚労省において社会保障審議会年金部会が開催されました(こちら)。委員を見ますと、労働・社会保障法の研究者では、上智大の森戸先生、早稲田大の菊地先生がメンバーに入っています(こちら)。

 同審議会の検討課題とスケジュールが示されておりますが(こちら)、まず何よりも注目される非正規労働者に対する社会保険適用拡大については、同会に特別部会を設け、本年末までに検討審議を進め、来年の通常国会に法案提出するイメージとの事。

 その他、年金給付の最低保障機能の強化、第3号被保険者制度の見直し、在職老齢年金の見直しなど重い検討課題が盛りだくさんであり、これを12月まで月2回ペースで審議を進めていくとしています。

 いずれも非常に重要なテーマであり、今後大きな議論を呼んでいくものと思われます。これだけの重い課題をどれだけ来年の国会までに一定の方向性を示し、法案提出・成立まで至るものか。現在の政治情勢、国民の議論状況に鑑みると、かなり厳しいと言わざるを得ませんが、動向が注目されるところです。

2011年8月5日金曜日

誰かが行かねば、道はできない by 木村大作


最近、心底しびれた本。木村大作「誰かが行かねば、道はできない」。出張の際に帯同しましたが、あまりのおもしろさに搭乗時刻を忘れそうになるくらい。木村大作氏は映画「八甲田山」から「駅(station)」など数々の伝説的邦画のキャメラを担当された名カメラマン(※最近作「剱岳」は監督を務められています)。木村さんのカメラマンとしての経歴を辿っていますが、おもしろいのは、独断専行ぶりです(もちろん映画に対するあくなき情熱がそうさせているのです)。撮影現場で「油断している役者等」をどなりつける様は読んでいて楽しくなってきました(現場の阿鼻叫喚ぶりは如何ばかりか?)。お勧めです。

 ところで木村大作さんのように、「職務権限・分掌」を無視し、良い映画を撮るために猪突猛進するようなカメラマンは「労働者」になるのかどうか。新宿労基署長事件がずっと頭にひっかかっているのですが、なかなか難しいですね。労災保険法における「労働者」と労基法のそれとはやはり区別して良いようにも思えるところです(立法論になりますが)。