2011年4月28日木曜日

労働保険料・社会保険料免除制度創設の動向(震災関係)

 東日本大震災の被害が甚大である災害救助法適用地域等では、すでに労働保険料・社会保険料の納付期間延長又は申請猶予が取られてきました。しかしながら同制度は保険料納付が「延長」されているに過ぎず、いずれ納付することが求められます。震災によって甚大な被害を受けた事業主・従業員が同保険料を納付することが容易ではないものですが、「免除制度」についても、ようやく同立法措置の準備が動き出したようです。以下、細川厚生労働大臣の閣議後記者会見から(こちら)。

 今日は、閣議で東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律案が閣議決定されました。この法律案には厚生労働省関係としては医療機関や社会福祉施設などの各種施設の災害復旧に関する費用の補助、それから、健康保険や厚生年金の保険料の免除といった事項を盛り込んでおります。また、こうした阪神淡路大震災の際の事項に加えまして、今回新たに、通常1割負担とされている介護保険の利用者負担について市町村がこれを減免する場合にその減免分を国が負担すること、あるいは最大360日とされている雇用保険の基本手当についてその支給日数を個別に60日まで延長できるようにすること、また、被災者の死亡を要件とする遺族年金などについて、行方不明の方がたくさんおられますが、この要件というのが民法では1年となっている失踪宣告を待たずに震災から3ヶ月間不明であれば、これを支給出来るということとするといった内容が含まれているところです。厚生労働省としてはこの法律に基づいて、震災の復旧復興に全力で取り組んでいきたいと考えております。

 同日、厚労省から発表された「日本はひとつ」しごとプロジェクト フェーズ2(第2段階)において、同免除制度の概要が示されています(こちら)。 

(イ)各種保険料等の免除等(補正予算・法律改正) 1,139 億円
 医療保険、介護保険、労働保険、厚生年金保険等に関し、被災地の事業所で、震災による被害を受けたことにより、賃金の支払に著しい支障が生じている場合に、保険料等の負担の免除や減免等を行い、被災事業所の業務の再開を支援する。


 先日開催された厚労省労働政策審議会職業安定分科会において、以下のとおり労働保険料の免除制度の概要が示されておりましたが、社会保険料免除も同様のものとなりそうです(審議会配布資料によれば、①かつ②を満たす事業主に対して保険料を免除)。
 ①平成23年3月11日に、適用事業場等が特定被災区域(特定被災区域とは、災害救助法(昭和2 2年法律第118号)が適用された市町村の区域(東京都を除く。))に所在
 ②震災被害により、労働者の賃金に著しい支障が生じている等の事情
 →免除対象期間は②が認められる間(最長平成23年3月〜翌2月まで)

 神戸大震災時の対応では、同免除期間についても被保険者期間とカウントし、さらに受給の際にも納付期間と同様の取扱いをしていました。詳細がまだ明らかにされておりませんが、同様の対応が取られることが予想されます。また標準報酬額の改定緩和なども併せて取られるものと思われます。

 同法案については、第一次補正予算と合わせて順調に国会において審議され、可決成立するものと期待されますが、なお問題は残ります。まずは免除を求める際、被災地域に所在している事業場であっても、「労働者の賃金に著しい支障が生じている等の事情」が求められる点です。同要件の結果、全国展開をしている企業が被災地域に支店を設けており、これが重大な被害を受けていたとしても、同社全体としてみれば当該事情に該当しないとされ、免除制度の利用ができない可能性が高いものと思われます(支店では困難としても、「全社」的な資金繰りで払えるのであれば、免除制度など利用できなくても良いのではないかというご見解も当然にありうるところですが・・・)。
 また特定被災区域以外に所在する事業場で、計画停電・風評被害・客数減・物流毀損等様々な要因で資金繰りに困難をきたしている場合については、今回の免除制度等の対象から外れています。企業にとって社会保険料額の負担は、かってないほど重くのしかかっており、今後は徴収上の困難が更に拡大することが予測されます。

 話は変わりますが、このような中、政府は更に「税と社会保障の一体改革」でパート(短時間労働者)の社会保険適用(「緩和」→事業主の視点からみると「拡大」)を検討しています(こちら 毎日jp記事)。労働・社会保険徴収・適用の動向は、同免除制度も含めて当面注視が必要です。

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