2011年3月29日火曜日

雇用調整助成金と支店・営業所休業等との関係(東北関東大震災の特例)

 雇用調整助成金は、経済上の理由等から企業の経営状態が急速に悪化した際、雇用への影響を極力回避するべく設けられた国の大きなセーフティネットです(詳細はこちら)。

 通常、同制度を活用しようとする企業は、3ヶ月間の売り上げ等の低迷を受けて、あらかじめ休業等に係る計画書・労使協定等を用意し、ハローワークに対し事前提出することが必要です。雇用調整助成金は提出された後の休業等に対して、一定の助成がなされるものであり、計画書提出前に遡った助成はされません(原則)。しかしながら今回の東北・関東大震災は、被災地において突然に予期しない被害をもたらしており、あらかじめ同計画書等を作成の上、職安に提出することは不可能です。

 厚労省はその点を鑑みたのか、以下の事業所については、雇用調整助成金の申請に際し、計画書等の事後提出を認める通達を発出しています(こちら)。(制度概要はこちら、Q&Aはこちら

特例適用の対象事業主
 東北地方太平洋沖地震等被災地域事業主 
  青森県、岩手
県、宮城県、福島県、茨城県のうち災害救助法の適用を受けた地域に所在する事業所の事業主であって、以下のいずれかに 該当するもの (※災害救助法の適用対象地域についてはこちら なお上記5県以外は本特例の適用に含まれていない点に注意)

 イ 生産指標の最近1ヶ月間の値がその直前の1ヶ月又は前年同期に比べ5パーセント減少している事業所の事業主
 ロ 生産指標の震災後1ヶ月間の値がその直前の1ヶ月又は前年同期に比べ5パーセント以上減少する見込みである事業所の事業主
 ※平成23年6月16日まで また本助成金は経済上の理由により事業活動が縮小された場合が対象とされる点に注意(Q2参照(こちら))

 同事業主については平成23年6月16日までの間に提出された場合、平成23年3月11日(震災当日)に遡って「事前に届け出られたものして取り扱って差し支えない」とするものです。また前述のイ、ロのとおり、支給要件についても生産指標の確認期間を3ヶ月から1ヶ月に短縮するとともに、平成23年6月16日までの間は生産指標の値が減少する見込みでも受け付けるなどの緩和がなされています。

 それでは本社が東京等にあり、支店・事業所が上記被災地域に所在する場合はどのように取り扱われるのでしょうか。多くの企業では同支店等の労働保険手続きについては、その便宜上、本社事業場等の「継続事業の一括」として取扱っています。

 前述の通達では「地域に所在する事業所の事業主」としていますので、継続事業の一括であろうとも、個々の事業場・支店が指定被災地に所在する限りにおいて、同特例の適用対象と読めなくもありません。

 これに対して先の通達は特段、答えるものではありませんが、昨日(3月28日)、東京労働局のハローワーク助成金事務センターに電話で照会を行ったところ、概略以下の回答がなされています(要旨)。

・継続事業の一括の場合、被災地にある事業所は本社等の事業所として取り扱われるため、特例適用は原則として不可
・同取り扱いについて、批判があることは承知している。本省もそれを踏まえて以下の例外を認めることにしている
・継続事業の一括であっても、被災地に所在する事業所における売り上げ等が全社の3分の1を占める(※以上か超か未確認)場合は例外として特例適用を認めることとした
・特例適用対象についての要望は本省に適宜伝えている

 担当者によって同回答にブレがみられ、労働局自体も混乱している印象を受けています。いずれにしても同回答を前提とすると、被災地において甚大な被害を受けた支店、営業所等において、その雇用を維持し、休業手当を支給していたとしても、3月11日に遡及して雇用調整助成金を受けることはできないという事になります(これからの申請・助成金給付(原則どおり)は要件を満たせば当然可)。被災地にある支店、営業所の苦境と雇用維持への尽力を伺っていると、特例適用に係る取り扱いが柔軟かつ適切に運用できないのか思うところです。

追記
 政府は「被災者等就労支援・雇用創出推進会議」を立ち上げ、被災者雇用対策について検討を進めるとの事(asahi.comはこちら 、また政府の同会議資料はこちら

 「厚労省が中心となり、近く編成する補正予算案に盛り込む雇用対策や法改正などを検討する。・・・助成金の要件緩和や手続きの簡略化など、予算を必要とせず緊急的にできることについては来週中にまとめる方針だ。」

 来週以降の動向に注目いたします。

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