2011年3月25日金曜日

被災地において賃金台帳等が散逸した場合、失業給付手続きはどうすれば良い?(神戸大震災時の商工会Q&Aから)

 先日から神戸大震災時の労働・社会保険関係の文献等を収集しておりますが、神戸大付属図書館の震災文庫に貴重なQ&Aが残されていました。

『事業主の方へ 被災に伴うパートタイム労働者雇用Q&A』 神戸商工会議所 平成7年3月 P1~P33(こちら

 当時と現在では、雇用調整助成金などが相当に様変わりしていますので、同Q&Aをみる際にはその点の注意が必要ではありますが、今でも参考になるQ&Aが多く盛り込まれています。

特に以下のQ&Aは被災地において、とても役に立つ情報だと思いました。

Q7

 当社は、雇用保険に未加入です。一般社員やパート社員から失業給付の手続きを依頼されました。どのようにすればよろしいでしょうか。また今回の震災で賃金台帳も出勤簿もなくなってしまった場合はどうでしょうか?

A

(1) 雇用保険被保険者の種類
 雇用保険は前述の通り、1人でも他人を雇うことになれば、強制適用ですので加入していただくこととなります。週30時間以上勤務する一般被保険者と週20時間以上30時間未満勤務する短時間被保険者の2種類があります。 前者は6か月以上継続勤務すれば雇用保険の基本手当が受給でき、後者は1年以上勤務すれば同じく受給できます。

(2) 雇用保険加入等の手続
 会社として早急に雇用保険の加入手続きをすることが必要です。時効の関係で2年以上遡及できませんが、今なら平成5年4月1日もしくは平成6年4月1日にさかのぼり保険料を収めることによって、各社員の資格取得に基づき受給資格ができます。雇い入れ日と社員の住所等を記入した労働者名簿を作成し、過去からの賃金台帳を整えて、管轄の労働基準監督署にて保険関係成立届と労働保険申告書を提出し、その後所轄の公共職業安定所で事業所設置届と被保険者資格取得居を提出してください。

(3) 従業員への離職票作成
 事業廃止・休止等で事業の継続ができなくなった場合や事業の縮小が余儀なくなり社員を解雇した場合等、雇用保険を受給する権利が当然社員にはありますので、退職の日にさかのぼって社員それぞれに離職票を作成し、所轄の公共職業安定所へ届出をし、発行された離職票を各社員に手渡してあげてください。

(4) 地震で賃金台帳等がない場合
 地震で賃金台帳も出勤簿もなくなってしまい、正確な賃金支払額が不明の時は、社会保険の標準報酬月額か、もしくは源泉徴収の給与支払報告書を持参して、公共職業安定所の窓口で相談してください。以上の証明する書面もなく何もない場合でも、事業主として社員の今後を考え、急ぎ手続きを行えるよう公共職業安定所で相談をしてください。



 神戸大震災の中、2〜3ヶ月足らずで懇切丁寧な同冊子をまとめられた神戸商工会議所専門相談員(社会保険労務士)の岡西英二郎氏、富岡忠彦氏、中川秀和氏に敬意を表するものです。

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