2010年12月30日木曜日

改正労働安全衛生法案における受動喫煙防止対策

 先日(平成22年12月22日)、厚労省労働政策審議会は「今後の職場における安全衛生対策について」を取りまとめ、厚生労働大臣に対し建議しました(こちら)。同建議を受けて、厚労省は来年1月からの通常国会に「改正労働安全衛生法案」を政府提出法案として提出すべく、準備を進める予定です。

 今回の建議において、まず注目されているのが受動喫煙防止に係る建議です。従前から厚生労働省(労働基準関係)も受動喫煙防止対策をガイドライン等を通じて展開してきましたが、これは「快適な職場環境形成」を目的としたものであり、法律上、事業者に対し義務づけられる性格のものとしていませんでした。これが今回の建議では「労働者の健康障害防止」とその施策の目的を転換するとともに、労働安全衛生法において事業主に同措置を義務づけることが提案されています。具体的には事業主(事務所、製造業等)に対し、職場の全面禁煙、空間分煙が法的に義務づけられるものです。これは大きな政策転換にあたるといえるでしょう。ただし同義務付けに際し、当面はその施行は行政指導によることとし、「罰則規定」は設けないこととされました。

 確かに最近では多くのオフィス、工場では、全面禁煙、空間分煙(喫煙室の別途設置)が進んでおり、これが法律上義務化されるとしても、さほど大きな影響を与えないことが見込まれています。これに対して、飲食店などのサービス業では、顧客が煙草を楽しみながら、飲食を楽しむ姿が今なお一般的です。同サービス業においては、接客等を担当する従業員は顧客が喫煙する環境の中、業務に従事する事になりますが、この場合、上記問題をどのように考えるべきでしょうか。

 この点が同建議取りまとめに際しても、大きな問題となっていました。これについて同建議では、以下のように取りまとめを行っています。
 飲食店、ホテル・旅館等の顧客が喫煙できることをサービスに含めて提供している場所についても、労働者の受動喫煙防止という観点からは、全面禁煙や空間分煙の措置をとることを事業者の義務とすることが適当である。しかしながら、顧客の喫煙に 制約を加えることにより営業上の支障が生じ、全面禁煙や空間分煙の措置をとること が困難な場合には、当分の間、可能な限り労働者の受動喫煙の機会を低減させること を事業者の義務とする。具体的には、換気等による有害物質濃度の低減等の措置をとることとし、換気等を行う場合には、浮遊粉じん濃度又は換気量の基準を達成しなけ ればならないこととすることが適当である。

 以上のとおり、サービス業の一部については、全面禁煙・空間分煙の措置を講じることが困難な場合、当分の間として「労働者の受動喫煙の機会を低減させること」つまりは「換気等による有害物質濃度の低減等の措置」を講じることで、全面禁煙等の措置に代替することを許容するとします。

 問題はこの「換気等による有害物質濃度の低減等の措置」ですが、建議では基準として以下のものを挙げます。
 換気等による有害物質濃度の低減等の措置により、浮遊粉じん濃度又 は換気量の基準については、粉じん濃度:0.15mg/m3 以下、n 席客席がある喫煙区域 における 1 時間あたりの必要換気量:70.3×n m3/時間とすることが適当である。

 同濃度の測定方法、換気設備設置・維持費用の概算などが安全衛生分科会の資料として提出されています。同資料については、人事労務担当者はもちろん、総務担当者、店舗管理担当者も早急に確認・検討すべきものといえます。

受動喫煙防止対策に係る測定方法(こちら
飲食店における換気対策に係る試算について(こちら

 なお同建議では同義務化に伴い、中小企業等に対し一定の財政支援等の施策を講じるべきとしています。

現在の政治情勢をみると、この労働安全衛生法案の行方も全く不透明ではありますが、まずは情報の整理まで。

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