2010年6月4日金曜日

「職場におけるメンタルヘルス対策検討会」第1回配布資料から

 先日(5月31日)、厚労省「職場におけるメンタルヘルス対策検討会」が開催されており、同資料がHPにUPされています(こちら)。

 同研究会の具体的な検討事項として次のものが挙げられています(こちら)。

1 労働者のメンタルヘルス不調の把握方法
 労働安全衛生法に基づく定期健康診断において、労働者が不利益を被らないよう配慮しつつ、効果的にメンタルヘルス不調者を把握する方法について検討する。

2 把握後適切に対応するための実施基盤の整備について
 メンタルヘルス不調者の把握後、事業者による労働時間の短縮、作業転換、休業、職場復帰等の対応が適切に行われるよう、メンタルヘルスの専門家と産業医を有する外部機関の活用、産業医の選任義務のない中小規模事業場における医師の確保に関する制度等について検討する。また、外部機関の質を確保するための措置についても検討する。特に、メンタルヘルス不調者の把握及び対応においては、実施基盤の整備が必要であることから、これらについて十分な検討を行う。

3 その他 職域と地域の連携強化など


 先日、拙ブログで紹介した「自殺・うつ病対策プロジェクトチーム」で示された検討課題がほぼそのまま横滑りしてきたものといえます(拙ブログはこちら)。改めて同検討事項を見ると、基盤整備以外の問題で若干気になるものが1点あります。それは「労働者が不利益を被らないよう配慮しつつ」、定期健診でメンタルヘルス不調者を把握する方法を検討するとの記述です。ここでいう「不利益」とはそもそも何を指すのか。例えば、メンタルヘルス不調者に対して、勤務時間短縮、休職等を命じることがありますが、この結果、賃金が減額ないし不支給となることがあります(ノーワーク・ノーペイ 但し私傷病休職であれば、傷病手当の支給あり)。これが「不利益」にあたるのか。また職務給制度の企業において、配置転換措置を講じた場合、給与減となる場合もありえますが、これも「不利益」となるのか否か。更には勤務時間短縮・休業・職務転換等の結果、「想定していた昇進・昇格が遅れる」という本人の懸念も「不利益」となり、企業として何らかの「配慮」を求められることになるのか。

 おそらくは同研究会でいう「不利益」は、まずメンタルヘルス健診不同意である労働者に対し、企業が直接不利益措置を行うことを禁じる趣旨での問題提起ではないかと思われますが、上記「不利益」こそが実際上、大きな課題といえます。検討課題でいえば、むしろ2に該当する内容になろうかと思われますが、この問題もメンタルヘルス健診義務化検討の際、避けて通ることはできない問題と考えます。

 なお同研究会配布資料には「メンタルヘルス不調の把握および把握後の対応等の現状」など有益な資料が含まれており、参考になります(こちら)。かなり急ピッチで研究会報告をとりまとめ、労働政策審議会での議論を開始する予定のようですが、産業医、法曹、研究者から同問題に精通するメンバーが参集された同会で如何なる報告書がまとめられるのか、注目されます。

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