2010年4月1日木曜日

改正雇用保険法(平成22年度)におけるモラルハザードの懸念

 昨日(平成22年3月31日)、改正雇用保険法が成立しました。
同改正の概要についてはこちらをご覧いただくとしまして、同改正事項の中で腑に落ちない点を指摘しておきたいと思います。

それは「雇用保険に未加入とされた者に対する遡及適用期間の改善」です(こちら)。

 従来は雇用保険加入の対象労働者が未加入扱いとされていた場合、被保険者であったことが確認された日から遡及適用されるのが、2年間とされていました。この取扱いの結果、失業した労働者がいざ雇用保険を受給しようとする際、遡及適用される被保険者期間が2年限りとされるため、その所定給付日数が不当にも短くなるとの指摘がなされていたところです。

 本改正では、その点を改善し、事業主から雇用保険料を控除されていたことが給与明細等の書類により確認された者については、2年を超えて遡及(天引き確認された時点まで)される事となりました。

 失業労働者から見ると良い改善であることは間違いありませんが、その反面、雇用保険料納付の問題が残ります。同取扱いのケースにおいて、事業主は保険料を納付していません(なお2年遡及適用分については、事業主に未納保険料の納付が命じられるとともに、追徴金、延滞金の問題が生じます)。
 その点を放置してしまうと、2年遡及を超える部分の保険料については、このように考える事業主が出てきても不思議ではありません。「どうせ国が立替えてくれるのだから、雇用保険料については申告納付ともにしなくても良い」。いわゆるモラルハザードの問題です。

 これに対して、今回の改正では以下の措置を講じる(労働保険徴収法の改正)との事ですが、これが先のモラルハザード対応として十分か否か。その点が今のところ、私にはよく分かりません。

 遡及適用の対象となった労働者を雇用していた事業主のうち、事業所全体として保険関係成立届を提出しておらず、保険料を納付していないケースについては、保険料の徴収時効である2年経過後でも納付可能とし、その納付を勧奨する。

 まず同納付対象となるのが、「事業所全体として保険関係成立届を提出していない」と限定する点。この文言だけを見ると次のような悪質な事業主から遡及納付を求められないことになるようにも読めます。
(例)保険関係成立届は出す一方、一部の労働者について(例えばパート・アルバイトで週20時間以上30時間未満等)は、事業主独自の見解で被保険者資格取得届を提出しない。その上で同労働者からは保険料を徴収(給与から天引き)しているようなケース

 また「納付」を勧奨するという点からは、その強制力が伺えません。恐らくはすでに時効消滅しているものを、改めて使用者に納付を強いること自体が、法制上許されないという見地からの判断とは思われます。確かに過去分についてはやむを得ないと思いますが、本年4月以降の労働保険料については、異なる取扱いも可能ではないかと考えるところです。

 桜を見ますと、どうも「学生」に戻っていけませんが、以上私見まで。

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