2010年3月31日水曜日

部下の暴力行為による負傷は労災に該当するか?

 先ほどnewsを見ておりましたら、「「口うるさい上司」社内で金づちで殴る」とのNEWS(yomiuri online(こちら))が報じられていました。

 アメリカ労災法のケースブックなどを見ると、職場内の暴行行為をめぐる労災法上の問題に1章を割いており、当地の関心の高さと判例の蓄積に大変驚いた記憶があります。それに比べると、我が国は同問題に対する危機感はさほどありませんが、今後同種事案が増加してくるとすれば、同問題をめぐる法的課題と企業実務対応について研究しておく要があるやもしれません。

 少なくとも現状でいえるとすれば、職場内における社員同士の暴行が「業務上」に該当するか否かは、加害行為の動機が判断の主なポイントとなります。厚労省の行政解釈においても、現場巡回を行っていた建設部長が現場大工に対して作業の手抜きをやり直すよう指示したところ、口論となり同大工が部長を角材で強打し負傷せしめた事案について、業務上と判断したものがあります(昭和23年9月28日 基災発第167号)。

 このように業務上の注意等に起因する暴行行為であれば、業務上と判断される可能性がありますが、難しいのが次のようなケースです。「折り合いが悪い」ため、かねてから犬猿の仲であった者同士において何かのはずみで暴行沙汰が生じた場合、これを業務上と取扱い、労災補償の対象とすべきか否か。「何かのはずみ」とする動機の解明が非常に難しいことから、労災認定も困難を極めるものと思われます。

 報道された案件については、加害者が警察に対して「毎日のように仕事のことで口うるさく注意され・・」などと自供しているようです。同供述が事実であるとすれば、同暴行行為による上司の負傷は先の行政解釈に照らしても、「業務上」に該当する可能性は高いと思われます。

 若干気になりますのが加害者が被害上司について「有給休暇を与えてくれずに・・・」等と供述している点です。上司自体が労基法等に反するパワハラ行為を繰り返しており、これが起因して部下の暴行行為を招いたような事案については、どのように考えるべきか。なかなか難しい問題ですね。じっくりと考えてみたい課題です。

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