2009年2月6日金曜日

副業と労働時間の通算

 受注減に伴い、製造業を中心に操業時間短縮・一時帰休が広がっています。その流れの中で副業を認める動きが出ているようです(47news)。

 仮にある日、4時間の操業短縮がなされ、A社での実労が4時間であったとします。同日、副業として、B社で5時間のアルバイトを行った場合、当日の労働時間および割増賃金をどのように考えるべきでしょうか。

 労働基準法によれば、同日の労働時間はA社4時間とB社5時間の総和である9時間とされ、同日1時間の時間外労働が生じる扱いとなります。したがって1時間の時間外割増賃金支払い義務が生じることになるものです(労基法38条)。それでは、A社・B社どちらに時間外労働が生じたこととなり、かつ割増賃金支払い義務が有することになるのでしょうか。これは同人がA社・B社どちらで先に働いていたかに左右されます。例えばA社勤務後、B社で就労した場合、B社に同責任が生じることになるものです(B社勤務後、A社であればその反対)。

 ここまでは労基法のおさらいですが、難問は同就労が1か月以上にわたり長期化した場合において、通算月間残業時間が80時間以上となっているケースです。仮に同ケースにおいて、過労死・自殺事案が生じた場合、副業先であるB社またはA社がどのような法的責任を負うことになるのでしょうか。とくに副業元・先がその事実を把握していない場合が問題です。大変な難問ですが、おそらくは労基署にしても裁判所にしても、まずは合算時間外労働時間数等を基に業務上外判断をすることになるのではないでしょうか。民事損害賠償の場合はA社・B社の責任割合が問題となりますが、一つの試論としては、損害発生への寄与度合などを考慮の上、責任按分を決することになると考えます(先例見当たらず)。

 以上のとおり副業の方が職場で脳心臓疾患等で倒れ、労災認定申請がなされた段階のリスクを少しばかり整理してみました。今後、実務においては、次から次へと難しい問題が生じることが想定されるところです。

2 件のコメント:

56513 さんのコメント...

北岡先生
久しぶりの更新、タイムリーな議論お待ちしておりました。派遣の場合、派遣期間について派遣元が派遣先に通知する仕組みが整備されていますが、このような二重就労が普通になればそのような仕組みが議論されるのでしょうね。難問としてあがっている例、もし、兼業の事実を労働者が誰にも申告していない場合はどうなるのでしょう?安全配慮義務の問題もそうですが、労災も(片方が加入していない場合はさらにふくざつ?)
もっと議論してみたいですね。

kitasharo さんのコメント...

疾風の如く早いコメントありがとうございます(笑)。労災手続きも実のところ、よく分かりません。どちらの保険を使うのか、そしてこれに絡んで労災保険給付の算定基礎となる平均賃金をA社でみるのか、副業先のB社でみるのか。仮に勤務時間の短いB社で平均賃金を算定された場合、被災者・遺族の「期待」と大きなギャップが生じることになります。特に副業先(コンビニ・ファミレス)などで深夜二重就労していた際、その場で脳心臓疾患を発症させたケースなどで、大きな問題となりそうです。まだまだ詰め切れていない問題が無数にありますね。