2008年12月24日水曜日

メンタルヘルス問題拡大の懸念について

 ここ数日、年末年始を利用して手つかずであった勉強をしようと、大学図書館に通ってはせっせと文献漁りを続ける毎日。つらつら考えている中で、懸念が高まっているのが職場におけるメンタルヘルス問題の拡大です。従来、同問題は休職・復職の局面で問題視されてきましたが、来年以降(現象としては、すでに本年秋口から始まりつつある)、雇用調整の局面でこの問題が深刻化する懸念を感じています。

 たとえば、会社側が従業員にリストラ目的で退職勧奨をしたとします。その後、同勧奨を受けた従業員が同勧奨及びその他事情(長時間労働、職場いじめその他)等が原因で精神疾患を発症した旨主張した場合、どのように考えるべきでしょうか。会社側として対応が非常に難しくなるのは間違いありません。

 まず同従業員側は、労災申請を行う可能性があります。また会社側に対して、安全配慮義務違反を理由とした損害賠償請求をなす余地が残されています。その上、仮に業務上と認められた場合、原則として治癒するまで労基法上の解雇規制が生じることになります。

 上記のような労災認定がなされず、私傷病扱いの精神疾患であったとしても、会社側に休職制度が設けられている場合は原則としてこれを利用させる必要が生じます。利用させずに整理解雇をするとすれば、会社側としても従来以上に万全の体制で臨まなければ、非常に難しい係争事案になると思われます。

 この他、退職勧奨の態様に問題があれば、従業員側がPTSDであると主張する可能性もあります。この場合、後遺障害等級が高めに判断される場合もあり、会社側の法的リスクがいよいよ深刻化する懸念があるものです。

 以上のとおり、雇用調整という切り口からメンタルヘルス問題を考えてみると、今後、事態が深刻化するのは間違いないようにも思えるところです。杞憂であれば良いのですが、いざの時のため検討は進めておく要があると思い、勉強を深めている次第。この成果は来年、どこかで表したいと考えております。

 

0 件のコメント: