2008年11月3日月曜日

退職手続きの違法性とは?-ゴムノイナキ事件判決ー

 ゴムノイナキ事件(大阪地裁平成19.6.15 労判957-79)
(事案) 勤務態度不良を理由とした業務指導の過程で退職した社員について、会社側が「自己都合」退職を前提に退職金、失業保険給付手続きを行ったことが違法とされ、会社都合退職による退職金および特定受給資格に基づく失業保険給付との差額分支払を命じた例(控訴後和解)

(コメント)結論・理由ともに反対
 退職勧奨自体はこれまでも、その回数・頻度あるいはその言動等が不相当である場合、違法であるとされ、損害賠償の対象とされてきた。これに対して、上記事案では、退職勧奨の態様は問題ではないとされる一方、退職の手続きに違法性があるとされた珍しい例。損害賠償として、本来「会社都合」で退職手続きを講ずべきであったとして、差額退職金及び失業保険(特定受給資格)の支払を会社に命じている。

 よくわからないのが、会社側が「自己都合」で退職手続きを処理し、退職金・失業保険手続きをとったことが、何故、損害賠償の対象となる「違法性」を帯びるのかという点。本判決の認定事実によれば、会社側の退職勧奨に態様上、問題はなかったとされており(むしろ「具体的かつ丁重な」指導であったと評価されている!)、退職事由が「辞職ないし合意退職」であることに間違いはない。

 加えて本件についていえば、本人の勤務成績不良に伴う指導が契機となり、退職したものといえる。たしかに純然たる私的理由による退職ではないとしても、同退職手続きを「会社都合退職」で行うべきとする違法性があるといえるのか。そもそも、何が違法であるのか、判決文からは定かではない。強いて考えるとすれば、労働契約に付随する適正に「退職手続き」を行うべき配慮義務とでもなるのか。

 また退職金の制度設計は、基本的に会社側にゆだねられている。いかなる場合に会社都合、あるいは自己都合で退職金を支給するべきかについても同様である。本判決では会社側の内規、過去の運用経緯などを検証することなしに一足とびで、本件の退職は会社にとってもメリットがあった等とし、会社都合退職金を支給すべきであったとする。しかしながら、前述の内規・運用経緯を評価することなしに、このような判断がなされるべきか大変、疑問を感じる。

 最後に特定受給資格についても、本件がこれに該当するか否かは、はなはだ疑問。ハローワークの運用においても、同種事案であれば、おそらくは特定受給資格としないのではないか。その上、同失業保険手続きにあたり、従業員自体も退職事由を記載できる仕組みとなっており、労使の対立があれば、ハローワークが最終決定を行うこととしている。とすれば、会社側の失業保険手続きはその一部に過ぎず、退職事由の記載をもって「損害賠償の対象たる違法性」があるのか、改めて疑問の念を強くする。

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