2008年12月31日水曜日

来年もよろしくお願いいたします

 今年は色々と形に残る仕事ができた1年でした。その成果の質についてはご指導を頂くべき点が多々あろうかと思いますが、様々な媒体に成果物を発表できた点は満足しています。それも、ひとえに周りの方々のサポートのお陰。感謝の念を強くする次第です。

 来年は何よりも基盤整備の年となりますが、それとともに版を重ねられるような仕事をぜひしたいと考えております。ご指導の方、よろしくお願いいたします。

 

2008年12月30日火曜日

(ドラマ)恋せども、愛せども

 ドラマ「恋せども、愛せども」(WOWOW、2008)

 金沢が舞台のヒューマンドラマ。岸恵子、壇ふみ、長谷川京子、京野ことみの4人が共演(いずれも好きな女優さんたちです(笑))。WOWOWドラマのせいか、「説明」が多い感あり。もう少し、役者さんの演技に信頼を置き、説明を画面に委ねるべきと思います。

 金沢。特に浅野川と金沢ひがし廓の風景が懐かしい。個人的には金沢の風景を楽しめただけ良しとしたい作品。金沢在住時代は、ひがし廓から見ると浅野川対岸になる橋場町のアパートで生活していました。今年の洪水では大変だったと思います。あのアパートは今も残っているのか気になるところ。

  

整理解雇法理について(解雇回避措置)

 拙稿「解雇回避措置論」労働法律旬報1502号34頁を久々に読み返しました。
 2001年、北大大学院の修士1年の際、道幸先生のご指導の下、整理解雇判例の共同研究の一環として書いた論文です。最近の経済情勢をみるにつけ、改めて整理解雇について勉強をしておく要があると思い、ここ10年くらいの整理解雇関係の文献を読んでいたのですが、その中に拙稿が含まれていた次第。

 書いてから読み返す機会もありませんでしたので、大変新鮮に読むことができました。案外書けていると思う一方、物足りない面も多々感じます。拙稿は整理解雇における解雇回避措置の中でも、希望退職募集に焦点を絞って、判例に見るその措置内容を分析しています。それはいいとしても、この希望退職募集その他解雇回避措置は整理解雇法理全体において、どのような位置づけを持つのか等、十分に検討し尽くしていない面も多々あることを実感しました。

 その後、整理解雇をめぐり参考となる論文が数多く出ていますが、その中で個人的に大変勉強になったのが神林龍編「解雇規制の法と経済」(日本評論社)所収の「整理解雇裁判例の分析」です。奥野先生、原先生が執筆された論考ですが、そこでは解雇回避「措置」ではなく、解雇回避に係る会社側の検討・準備こそが裁判所の判断において重きが置かれている旨、明快に論じられています。プロセス重視の視点から、整理解雇判例法理を改めて見直した論考です。

 私の中で腑に落ちない面はあるのですが、同論文を通じて、刺激を受けるところ大でした。その他、先生方の論文を読み返していますと、整理解雇法理について共通した問題関心を指摘することができます。それは、事業所閉鎖・会社解散等、あるいは経営効率化のための組織再編を目的とした整理解雇への法的対応です。そのうえ、会社分割と労働契約承継という問題が登場しています。これら複雑困難性が高まる整理解雇に対し、従来型の整理解雇法理で対応できるのか、法理を修正するとしても、どのような方向性が考えられるのか、課題は尽きないところです。来年に向けて、また新たな課題ができました。

 

2008年12月24日水曜日

メンタルヘルス問題拡大の懸念について

 ここ数日、年末年始を利用して手つかずであった勉強をしようと、大学図書館に通ってはせっせと文献漁りを続ける毎日。つらつら考えている中で、懸念が高まっているのが職場におけるメンタルヘルス問題の拡大です。従来、同問題は休職・復職の局面で問題視されてきましたが、来年以降(現象としては、すでに本年秋口から始まりつつある)、雇用調整の局面でこの問題が深刻化する懸念を感じています。

 たとえば、会社側が従業員にリストラ目的で退職勧奨をしたとします。その後、同勧奨を受けた従業員が同勧奨及びその他事情(長時間労働、職場いじめその他)等が原因で精神疾患を発症した旨主張した場合、どのように考えるべきでしょうか。会社側として対応が非常に難しくなるのは間違いありません。

 まず同従業員側は、労災申請を行う可能性があります。また会社側に対して、安全配慮義務違反を理由とした損害賠償請求をなす余地が残されています。その上、仮に業務上と認められた場合、原則として治癒するまで労基法上の解雇規制が生じることになります。

 上記のような労災認定がなされず、私傷病扱いの精神疾患であったとしても、会社側に休職制度が設けられている場合は原則としてこれを利用させる必要が生じます。利用させずに整理解雇をするとすれば、会社側としても従来以上に万全の体制で臨まなければ、非常に難しい係争事案になると思われます。

 この他、退職勧奨の態様に問題があれば、従業員側がPTSDであると主張する可能性もあります。この場合、後遺障害等級が高めに判断される場合もあり、会社側の法的リスクがいよいよ深刻化する懸念があるものです。

 以上のとおり、雇用調整という切り口からメンタルヘルス問題を考えてみると、今後、事態が深刻化するのは間違いないようにも思えるところです。杞憂であれば良いのですが、いざの時のため検討は進めておく要があると思い、勉強を深めている次第。この成果は来年、どこかで表したいと考えております。

 

2008年12月23日火曜日

(読書)「パリの女は産んでいる」中島さおり(ポプラ文庫)

「パリの女は産んでいる」中島さおり著(ポプラ文庫)
 2006年、フランスの合計特殊出生率は2.0パーセントを超えました。日本から見て、その出生率の高さは驚嘆に値します。仮にここまで我が国の出生率が持ち直したとすれば、懸案の少子高齢化問題、年金問題の多くが解消されることになります。

 では、フランスにおいてなぜ、これだけ合計特殊出生率が増加したのか。その疑問を「恋愛大国フランス」という観点から、ミクロレベルで描写したのが、本書です。実に読み応えがありました。日仏文化比較としても大変、勉強になります。特に「フレンチママのサポートシステム」、「大人中心のリラックス子育て」を紹介した4章、5章は考えさせるところ大です。

 少子化問題については、育児休業あるいは児童手当拡充、WLBの促進などマクロレベルで論じられることが多いのですが、これらの政策も個人レベルに影響を与えてこそ意味があります。どうも本書を読んでいると、お金の問題(金銭給付)も重要ですが、それ以上に親が「子育て、大人としての生活、仕事、休息」の4者のバランスに満足しうるためのサポートこそが決め手となりうると感じた次第です。

 この少子化問題については、答えはよその国にあるはずはなく、日本で見つけるほかありません。しかし、他国の取組や状況を知ることは、日本を相対化し、より深く問題への対応を考える上で有益ではないでしょうか。本書のような著作が多く読まれれば良いと思います。

2008年12月17日水曜日

定年送別会の事故と法的責任

 「定年送別会の胴上げで落下、同僚らを刑事告訴」という痛ましい事件が報じられていました(asahi.com08.12.16)。同報道に接し、真っ先に考えたのは会社側の法的責任です。マスコミ報道をみる限り、ご遺族が会社側に対してなんらかの法的請求を行ったか否かは定かではありません。

 仮にご遺族が労災認定を求めた場合、業務上認定がされ、遺族補償年金等が支給される可能性があるのでしょうか。また同僚3人らの不法行為に対する使用者責任(民法715条)を会社側に問える余地がないのでしょうか。先の報道された個別事案と離れて、この問題について法的論点の整理のみ行ってみます。

・会社主催の送別会ではどうか(なお先の報道事案は、有志主催とのこと) → 送別会参加に業務性があるとしても、「胴上げによる事故」が業務による送別会に内在するリスクといいうるのか? 故意に同僚が落下させたとすれば、業務起因性が否定されるか否か?

・会社主催ではないが、会社側が一定の費用負担を行ったり、参加案内等の便宜を図っていた場合、どうか

・社員が「退職後、開催された送別会で被災した」場合は、労災認定される余地はないか

・労災認定が不可としても、同送別会が職務との関連性を有する場合、同僚社員の不法行為に対し、会社側は使用者責任を負う可能性はあるか → 不法行為請求については、被害者が社員である必要なし(当然、被害者が業務で送別会に出ていたか否かも問題とならない)。

・使用者責任が認められるにしても、過失相殺の余地はあるか

・会社・加害社員との間の責任分担割合

 以前、アメリカの労災補償制度を勉強していた際、驚かされたのは、職場における上司・同僚・部下間の「暴力」が、労災補償認定において大きなテーマとされている点でした。日本においても、上記問題のほか、パワハラ等をめぐる労災認定が深刻化しつつあります。同問題については、大学院在学中から関心を持ち続けているテーマですので、来年は、ぜひともまとまったものを書きたいと思っています。そのためには基礎研究が不可欠。年末年始は、少し腰を落ち着けて、労災認定と民事損害賠償について研鑽を深めたいと考えています。

2008年12月15日月曜日

野党3党による「有期労働契約遵守法案」について

 平成20年12月15日、民主党、社民党、国民新党の野党3党が参議院に「緊急雇用対策関連4法案」を提出した旨、報じられています(中国新聞)。その中には「有期労働契約遵守法案」が含まれていますが、同法案はどのような内容なのでしょうか。法案成立の目途については神のみぞ知るものですが、政治情勢不安定の中、思いがけずに急転直下、成立する可能性も否定できません。一応はフォローしておく要があるものです。

 同法案の内容については、民主党HPに法案要綱等が掲載されていました。同法案は労働契約法17条以下に、有期労働契約者の雇用保護を目的とした以下の規定を追加することを目的としています。

1 有期雇用契約締結の目的規制  
 臨時・一時的業務、休業労働者の代替要員など一定の事由がある場合に限り、有期雇用契約の締結を認めるものとする(同事由に該当しないものは、有期労働契約として認めない→無期契約とみなす)。

2 有期労働契約者等に対する差別的取扱いの禁止

3 有期雇用契約の雇止めに対する規制
 有期雇用契約の更新を本人が希望し、かつ、前の有期雇用契約の更新回数、勤続年数その他事情に照らして、更新をしないことが客観的に合理性を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、使用者がその更新を拒んではならないとするもの。

その他、労働者側の退職の自由(1年を超える有期契約における、期間中途の退職の自由)、雇止めの予告等。

(コメント)
 思うに1~3いずれも労働法制全体にかかわるものであり、慎重な検討の上、進められるべき立法課題と考えます。とくに1の目的規制については、これを導入することにより、雇用市場全体が冷え込む懸念もあり、慎重な検討が不可避ではないでしょうか。また3については、民主党案を見ることにより、改めて有期契約の雇止め法理を立法化することの難しさを痛感させられました。いずれにしても同法案に対し、世論がどのような反応を示すものなのかが、大変気になるところです。今後の労働法制の将来像を占ううえでも、注目されます。
 

2008年12月13日土曜日

経済情勢の悪化を踏まえた適切な行政運営方針とは(有期雇用契約関係)

 有期雇用契約については、従来から様々な法規制あるいは指針上のルールが定められています。まず労働基準法において契約期間の上限(原則3年、例外5年)等が定められています(同法14条1項)。また平成20年3月に施行された労働契約法においても、「有期契約期間中の解雇はやむを得ない事由がなければできない」、「有期契約期間を必要以上に細切れにしないように努めること(同法17条)が明文化されました。
 これとともに、実務上重要であるのが「有期労働契約の締結・更新・雇止めに関する基準」(以下、雇止め指針)です。同指針には、有期契約締結時の明示事項(更新の有無、更新の判断基準など)、雇止めの際の予告ルール(有期労働契約が3回以上更新されているか、1年を超えて継続して雇用されている場合、少なくとも契約期間終了する日の30日前までに予告)などが定められています。同指針には法的拘束力はなく、労基署が同指針に基づき、助言指導を行うことができる(同法3項)形式でのルール実効性確保を図っています。しかしながら、同指針については、実のところさほど厳しい指導が展開されてきませんでした(なお有期契約労働者に係る法規制、指針その他ガイドラインを分かりやすくまとめたものとして、厚労省「有期契約労働者の雇用管理の改善に関するガイドライン」(2008))。

 これが先日、現下の厳しい雇用失業情勢とりわけ有期契約労働者等の雇い止めが深刻化する中、発出された新通達で流れが変わる可能性があります(「経済情勢の悪化を踏まえた適切な行政運営方針について」(平成20年12月9日)地発第1209001号、基発第1209001号参照)。まず同通達では、労使双方に対し、雇止め指針など有期契約労働者に係る労働ルールを周知徹底する旨、明確に打ち出されました。その上で、労基署における申告事案への優先的な対応として、「有期契約労働者に係る事案であっても、雇止め等に関する基準に適合していないおそれのあるものについては、必要な調査を行い、労働基準法第14条3項に基づく助言・指導等を行うこと」とされました。今後は先の雇止め指針に定める書面明示、雇止め予告等に係る企業への助言・指導例が急増することが予想されるところであり、各企業においては、改めて同雇止め指針に基づく有期雇用契約書及び運用双方の社内点検が求められます。

 これだけではありません。有期雇用契約については、判例法理において、以前から有期雇用契約を反復更新等していた場合、契約期間満了を理由とした雇止めに解雇権濫用法理が類推適用されることがありました。これを受けて、先の新通達においても、「雇止め・・については、労働基準法等で定める法定労働条件を遵守することはもとより、労働契約法や裁判例等に照らして不適切な取扱いが行われることのないよう、事業主等にたいし・・周知を図り、適切な労務管理の必要性について啓発指導を行うこと」とされており、雇止め指針の指導とともに「事前に労使間での話合いや労働者への説明が十分に行うことが重要である旨説明すること」が全国の労働基準監督署に指示されています。

 雇止めの問題は、その予告を除いて、労基署がさほど指導実績が乏しい分野です。現下の厳しい経済環境を踏まえた上での通達ではありますが、この「啓発指導」の具体的内容と、それが企業実務に与える影響については、今後の労基署の動向を見守る必要があります。いずれにせよ、有期雇用契約の雇止め問題が、来年に向けて、労働法上、注目が高まる可能性を感じているものです。

2008年12月10日水曜日

育児休業法トリビア(夫・妻双方が育休を取れる?)

(Question)A氏(男性、36歳会社員)は、妻(会社員)、3歳の長女の3人世帯で生活していたところ、先月、妻が三つ子を出産しました。明日には妻が退院し、6人家族となります。妻は産後休暇明け後、1年間の育児休業を取得しますが、先日、真顔で「私だけでは4人の子供の面倒は見れません。あなたも育児休業を取って、3歳の長女の面倒だけでも見てほしい」と言われました。

 A氏も育児休業を取得することは可能なのでしょうか?なおA氏及びA氏の妻の会社には、育児介護休業法関係の労使協定がないことを前提とします。

 先日、読売新聞の大津和夫さんに「改正育児介護休業法案の動向」について、セミナー講演を頂きました。その際、話題になった問題です。結論からいえば、A氏が育児休業を取得することはできます。会社はこれを拒むことはできません。

 「そんなはずない」と思われた方が多いと思いますが、まず自社の労使協定をご確認ください。設問では労使協定がないことを前提としましたが、労使協定を締結し、「配偶者が専業主婦(夫)である場合、育児休業を取得させない」旨、明らかにしておけば、専業主婦(夫)のいる社員は育児休業を取得できなくなります。同協定は企業全体の7割で締結されているとのデータがあり、多くの企業ではあまり意識せずとも、そのような労使協定を根拠に、A氏の請求を拒むことが現状において可能です。

 しかしながら、先日も本ブログで取り上げましたが、この労使協定による適用除外を撤廃すべきであるとの議論が、今回の育児介護休業法改正案において検討されています。同法案が国会に提出され、成立すれば、A氏(といいますが、A氏の奥様というべきか)の願いがかなうことになるものです。順調に来年度の通常国会で成立すれば、施行が平成22年4月1日を予定しているとのこと。

 では法施行されれば、A氏含め、すべての社員が育児休業を取りだすかですが、実のところ、爆発的に増えることはないと思われます。育児休業中の所得保障の問題が残されているからです。雇用保険からの給付のみでやっていければよいのですが、給付水準が従前所得の5割程度にとどまることから、やはりどちらかが、働かざるを得ないと思います。あるとすれば、奥さんの退院後しばらく生活が落ち着くまで、あるいは長女長男の入学・入園時期などの短期間のみ双方が取得することは、ありうると思うところです。

 最後にトリビアを一つ。
  「奥さんの産後休業期間中(産後8週間まで)、夫は育児休業を取ることができる(労使協定があったとしても)」
 ※奥様が専業主婦であろうが、共稼ぎであろうが同じです。要はこの間は奥様も産後休業で休んでいるのであり、「育児休業」を取得している訳ではないので、夫が育児休業を取ることが当然可能となる)

 私も実はよく知らなかったのですが(お恥ずかしい)、上記のとおりです。A氏もまず奥様の産後休業中、思い切って育児休業を取って、その後しばらく続く「激動の子育て期」における生活設計を金銭面含め、相談しておくことが良策と思います。 なおA氏は今のところ私のことではありません、念のため(笑)。
 

2008年12月6日土曜日

改正労基法について思うこと

 昨日(2008.12.5)、改正労基法が成立しました。割増賃金率の引き上げ(月間60時間超に5割増)が大きな改正点であります。

 学部で労働法を学んでいた時から、割増賃金について、このような議論を聞いておりました。「日本の割増賃金率は諸外国に比べて低い(労働法規制の乏しいアメリカですら、5割増)。そのため、日本では長時間労働が蔓延しているのであり、割増賃金率の引き上げが不可避である」と。

 確かに労働経済学者の議論を借りるまでもなく、割増賃金率が低いとその分、時間外労働をさせるコストが安く済むのは間違いないでしょう。仕事量が仮に一時、多くなったとしても、代替要員を補充するよりも、採用コスト等と比較すれば、既存社員を残業させた方が低コストになると思います。理論上は・・・・。

 問題は割増賃金率を25%から50%に引き上げる(しかも月間60時間以上の時間外労働に)ことによって、既存社員の残業<代替要員補充にシフトチェンジするといえるのか否かです。

 そもそも先の議論自体が通用する労使関係は、それほど広くないようにも思えます。製造業工場の現場作業に従事する社員についての要員管理であれば、その種の議論がストレートに適用されるような気がしますが、ホワイトカラー事務員の職場をみれば、この議論は違和感を覚えるところではないでしょうか。

 極論をいえば、ホワイトカラー労働については、やってもらうべき仕事があれば、割増賃金率がどうであれ、同社員にやってもらわざるを得ないところがあり、割増賃金率が高い=代替要員へのシフトチェンジという流れで、労務管理が変容していくものか素朴に疑問を感じています。 また、そもそもホワイトカラー層の労働時間数把握について、問題が山積していることは周知のとおりです。

 とすれば、今回の法改正は、一体何のための改正なのでしょうか。改めて改正労基法が国会に提出された際の理由をみると、次のように述べられています。

「長時間にわたり労働する労働者の割合が高い水準で推移していること等に対応し、労働以外の生活のための時間を確保しながら働くことができるようにするため、一定の時間を超える時間外労働について割増賃金の率を引き上げる」(提出時法律案)。

 やはり長時間労働防止が目的とのことです。確かに「一定の時間」である月間60時間という残業時間数は、「過労死認定基準」と相まって、今後、人事労務管理上押さえておくべき数字として広がることは確実です。その意味で「宣伝効果」はあると思いますが、経済合理性の観点から、企業が残業に代わって、代替要員確保を行うインセンティブが高まるとは思えません(ホワイトカラー層。工場の現業部門であれば、その可能性はあるかもしれませんが)。

 本当に政府が長時間労働防止のために労働時間規制を行おうとするのであれば、濱口桂一郎先生が以前から紹介されているとおり、EU規制に見られる休息時間規制(仕事終了後、最低11時間の休息を与えた上でなければ、就労させてはならないということ)が最も効果的であるのは間違いないと思います。そもそも過労死認定基準の月間100時間、もしくは2か月~6か月平均で80時間以上の時間外労働という数字も、生活のため最低必要な時間+睡眠時間「6時間」を確保できるか否かという観点から、算出された数字とされています。とすれば、休息時間規制が最も過労死等の防止からも適切な措置といいうるのですが、この点についての議論は残念ながら、あまり進んでいないようです。

 いずれにせよ、改正労基法が成立しました。実務家としては、この法律の施行までに相応の準備を行っていく必要がある訳ですが、率直に言って、どうにも腑に落ちないところが多い法改正と思います。

 ところで労基署からの監督指導においても、平成22年4月以降は残業時間数が60時間なのか、60時間1秒であるのかを問われる(1秒は極論ですが、一応法律上はそうなります)ことになります。またまた関係者すべてにとって骨のおれる問題が生じることになりそうです。

 腑に落ちないところがあるにせよ、実務担当者としては、総額人件費管理、リスク管理そして労基署対応の面から、平成22年4月までに「極力、月間60時間を超える残業はしない、させない」を徹底する他ないと考えるところです。

 

2008年12月3日水曜日

経営悪化を理由とした有期契約の雇止めの可否について

 労働法学研究会報に連載中の「事例でみる労働法」1月号原稿の初稿がおおむね仕上がりました。今回取り上げましたのは、上記テーマです。日立メディコ事件、三洋電機事件、丸子警報器事件そして芙蓉ビジネスサービス事件という4つの判例を取り上げ、経営悪化を理由とした雇止めがいかなる場合に規制されるのか検討しております。特に雇用継続の期待に応じた雇止め回避措置の内容を整理した点が意義あるところと考えております。

 本日も、某自動車会社の有期雇用契約社員の雇止めが提訴されたとする報に接しました。今後、経営情勢に伴う有期契約社員の雇止めが更に深刻化する恐れがあり、過去の裁判例の再検討が一層重要になると感じております。そのような検討が不用となるような景気復調が強く望まれるところです。

2008年12月2日火曜日

初仕事と昭和へのタイムスリップ

 昨日は社労士としての初仕事日。有期雇用契約問題を取り上げたセミナーで、2時間ほど話をさせていただきました。その後、M先生にお越しいただき、1時間程、ご質問に対する解説などを行いました。ご質問がいずれも、大変ポイントを突いたものであり、刺激的な質疑応答になりました。ご参加者のご清聴そして熱意に感謝する次第です。

 同セミナーは秋葉原UDXという、出来たてほやほやのビル内会議室で開催いたしました。その後、M先生と私は「反省会」のため、秋葉原「赤津加」へ(居酒屋です(笑))。UDXから赤津加への移動はわずか5分程度でしたが、環境激変。平成からタイムカプセルに乗り「昭和」に戻ったような気がした程です。それにしても、菊正宗の熱燗と煮込みが絶品でした。M先生、ありがとうございます。

2008年12月1日月曜日

映画「転々」

 「時効警察」の三木聡監督作品。一言でいえば、吉祥寺から霞ヶ関まで散歩する債務者(オダギリジョー)とサラ金取り立て(三浦友和)の話。映画として成立するのか不安を抱いていたのですが、実におもしろい作品でした。小コントがずっと連鎖していく感じで、見ているものを飽きさせません。また劇中、描かれる東京の散歩道が実に良いのです。二人の散歩道を辿ってみたいと思うところです。

 それにしても、冒頭の吉祥寺井の頭公園から笑わせていただきました。同公園近くの●せやという著名な焼鳥屋の前で、三浦友和の一言。「ここの焼き鳥、うまそうなんだければ、食べてみると、そうでもないんだよなぁ」。私は言葉を失いました(笑い)。

2008年11月29日土曜日

WLBと労使自治~育介法改正論議から~

 昨日、厚労省労働政策審議会雇用均等分科会を傍聴しておりました。育児介護休業法改正案についての審議が山場を迎えています。審議会は予定調和的なものが大半ですが、さにあらず。労働側が席を立つそぶりをみせたり、あるいは公益委員と事務方が叩き台の解釈について、やり取りするなど、傍聴者としては、聞きごたえ十分の審議会でした(笑)。
 その場で、個人的に最も聞き耳を立てたのは、表題の労使自治と育児介護休業法の両立支援との関係です。現行の育児介護休業法では、労使協定を締結することによって、専業主婦(夫)がいる従業員からの育児介護休業請求権を失わせることが可能とされています。大半の企業では、労使協定を締結し、これらの権利行使を排斥しているものですが、今回の改正法では男性の育児参加を促進するべく、同適用除外を撤廃する方向で叩き台が示されています。
 
 同日、使用者側委員からは、労使自治を尊重する立場から、法による「撤廃」は望ましくないのではないか、従来どおり労使で話し合いの上で、認めるか否か決すればよいのではないかとする意見が示されました。

 これに対して、公益委員の樋口先生が以下のような趣旨で見解を述べられました(近日中に厚労省HPに議事録が掲載されるものと思われます。以下は私のメモからまとめた要旨です)。

 (佐藤先生からの育児介護休業法を取り巻く環境が大きく変わっているとの趣旨の発言を引き取った上で)
 専業主婦(夫)を有する配偶者が育児休業を取り、子育てに参加したいという個人的な願いを、集団的な労使協定で排斥することには限界があるのではないか。労使自治は当然、大切ではあるが、それも法の枠内にあるものではないか。

 労働法学では、以前から労働協約の規範的効力の限界が論じられてきました。樋口先生のご見解は、その際の議論(西谷敏先生など)を思い起こさせました。近年の労働法制は高齢者雇用延長制度など、労使協定を様々な形で絡ませる傾向があります。今回の育児介護休業法改正の議論は、これに対する反省をもたらす可能性があるのか関心を持ちました。

 育児介護休業法改正案については、次回の審議会で事務方から「素案」が示される見通しです。昨年とは一変して、なかなか調整に難航しそうな雰囲気を感じた次第です。
 
 

2008年11月27日木曜日

映画「スワロウテイル」再見

 岩井監督のデビュー当初、食わず嫌いのわたくしは同作品を意識的に避けていました。まずもって邦画であるにもかかわらず、洋画エンディングの如く、キャストをローマ字表記横書きで出すところからして、鼻もちならん人と思っていました(笑)。

 それが社会人となり、友人から岩井作品を薦められてからは一転、岩井さんの最新作がかかるとなると、真っ先に映画館に駆けつけるようになってしまいました。岩井監督も私のいちゃもんを知ってか知らずか(知りません!)、「四月物語」では邦画らしく、漢字縦書きでキャスト紹介されたので、更に好感UPしたものです。

 ここ最近は「市川崑物語」などの小品を除いて、岩井監督の最新作がご無沙汰で少々、さびしい思いをしています。そのためか、ビデオ屋に寄っては、過去の岩井作品を借り出し、何度目かの再見を繰り返している今日この頃。先日は「スワロウテイル」を見返してましたが、今だに面白い。同作品の核はやはりYEN TOWN BANDの「Swallowtail Butterfly」。charaの歌声を聞くだけでも、わたくしなどは涙腺がゆるみっぱなしで、それだけでこの映画をみる価値があります。また再見で初めて魅了されたのは、三上博史さん演じるフェイホンという人物。初見の際は、全く同人物に感情移入できませんでしたが、四捨五入すると40になる年を迎えたせいからか、同人物の抱く夢や、その人間的弱さに強く惹かれるものを感じた次第。彼がcharaの看板を見上げるシーンがまたいいのです。公開時の「フジTV大量動員商法」に嫌悪感を覚え、避けてとおった方にこそ、強くお勧めをしたい映画の一つです。それにしても月並みですが、お金は怖いものですね。ちょうど岩井さんが売れ出した頃に撮られた作品であるからか、お金への違和感がとても素直に表現されていて、しんみりさせられました。最後に同作品に出ている伊藤歩、光石研、塩見三省、田口トモロウなど多くの出演者が今現在、活躍されていることが嬉しいですね。岩井さんの目の確かさを再認識させられるところです。

2008年11月24日月曜日

今年の仕事(執筆・セミナー)棚卸中の誓い

 少々早い感もありますが、ブログ開設等に伴い、この3連休に今年の仕事の棚卸をしています。まずは「セミナー講演」と「執筆」この二つのみに絞って整理をしてみました(ブログ右欄下部に掲載)。

 概観してみると、会報執筆はバラエティに富んでおります。飲酒運転に対する懲戒処分から、就業規則周知、派遣問題など、なんでもありです。これ1本書くことはなかなか労多く・・・ですが、筋力トレーニングの一種と言い聞かせながら、汗をかいています(笑)。おかげさまで、だいぶ「筋力」とその稼働範囲が広がってきた気がしております。

 セミナー講演は数えてみると、40回程度やらせていただきました。テーマについても、これまた改正パート法、名ばかり管理職問題から、退職勧奨、労働行政など幅広い内容で講演させていただいています。いずれの講演も聴講者の方々には、ご清聴いただいた上、セミナー終了後、有益な示唆を数多く頂き、感謝に堪えないところです。

 この棚卸中、はたと気がついたのですが、実務担当者向けの労働法関係の良書はいずれも、セミナー後の質疑応答をうまく取り込んでいます。例えば安西愈先生の「労働時間・休日・休憩の法律実務」を読み返していると、安西先生とセミナー参加者の息遣いまでが聞こえてくるような気がするほどです。だからこそ、実務家が読んでいて「役に立つ」と感じられるものになるのでしょう。私も将来的には、そのようなものを作っていきたいとの念を強く致しました。まだまだ筋トレが足りないようではありますが・・。(その前にメタボ対策をしろなどと、忘年会シーズン前に無慈悲なことを仰らないよう切に希望します(笑))。 

2008年11月21日金曜日

退職手続きの違法性再論

 今週は先日ブログに書いたゴムノイナキ事件を別の場で2回、お話をさせていただく機会を得ました。どちらの機会ともに、参加者の方から有益なご示唆を頂くことが多く、ありがたい思いを致しました。

 その中でも実務経験豊富なベテラン社労士の先生からの示唆が大変、勉強になりました。同先生のお話によれば、労使間で対立が生じる可能性のある離職事由については、離職票に「勧奨退職」とのみ記載し提出するケースが多いとのことです。この記載であれば、ハローワークも特に異論なく「特定受給資格者」と取扱うこととなり、労使双方も大半は丸く収まるとのこと。

 この離職事由において、例えば「勤務成績不良を理由とした退職勧奨による退職」などと会社側が記載をしますと、それを受け取った従業員は当然良い顔をしませんし、ハローワークも対応に苦慮することになります。先日、私がハローワークに正面から確認した際、担当者が困惑してたことが思い出されます。実務処理の本流を知ることができ、大変ありがたい思いをいたしました。

 おそらく実務では大半が問題なく手続き処理されるのでしょうが、まれにトラブルが生じることがあります。そのまれなトラブルを解決することも、法の大きな役割だと考えています。その意味では、ゴムノイナキ事件判決に対する批判的検討の重要性は損なわれるものではないと思うところです。

2008年11月16日日曜日

社労士としてどのようなサービスをご提供できるのか?

先日から、私が企業人事を中心としたお客様にどのような社労士業務のサービスを提供できるのか考えています。さしあたり「今、ご提供できると思われること」を書き出してみました。未登録・未開業者の妄想にすぎないものですが・・・・。

1 労働基準監督署対応支援として
(1)労働基準法対応として
 ①労働基準監督署からの臨検監督準備および立会支援
 ②同監督指導後の是正対応支援(担当者との調整、是正報告)
 ③是正報告後のフォローアップ(是正報告内容の定着)
 ④36協定ほか各種届出・許認可作成・届け出代行・支援
 ⑤内部労務監査支援(各事業場パトロール、事前点検実施)
(2)労働安全衛生法対応として
 ⑤労働災害発生防止体制構築支援(安全・衛生管理体制構築等)
 ⑥労働安全衛生監督指導の準備・立会、是正対応支援
 ⑦安全衛生内部監査支援(各事業場パトロールほか)
 ⑧労働安全衛生是正後のフォローアップ

(3)労災対応として
 ⑧労災手続きの支援・手続き代行
 ⑨労災調査への準備・立会支援
 ⑩労働者死傷病報告書作成の支援・代行

2 就業規則作成・点検業務
 ⑪就業規則の新規作成・届け出業務
 ⑫既存規定点検および変更作成・届け出業務
 点検例)法改正対応、長時間在社・労働防止、休職・復職対応ほか
 ⑬就業規則施行後の周知(説明会等)、内部点検支援

3 労務案件個別相談・対応支援(労働局斡旋制度代理は特定資格取得後開始予定)
 ⑭募集・面接・内定・試用間の労務問題への助言・対応支援
 ⑮採用後生じる労務問題への助言・対応支援
 例)長時間労働、休職・復職、パート等雇用管理、パワハラほか
 ⑯雇用関係終了をめぐる労務相談への助言・対応支援
 例)退職勧奨、整理解雇、普通解雇、懲戒解雇その他

4 各種社内研修セミナー・新法動向等情報提供

 つらつらと書きだしてみましたが、これらをもう少し分かりやすくお示ししていく必要性を感じます。また他の労働行政(派遣請負、パート法等)はもちろん、社会保険・社会福祉分野に仕事を広げていきたいです。将来的には、労働保険・社会保険の支給請求、不服審査請求の経験を積み、社会保障法分野においても、一定の貢献ができるようになりたいものです。

2008年11月12日水曜日

労働契約法@松本講演(有田社労士主催)

 長野県松本市の有田社労士にお招きいただき、「労働契約法施行に伴う就業規則の規定と運用点検セミナー」を峰隆之弁護士とともにご講演させていただきました。この講演に備えて、久し振りに労働契約法を勉強しましたが、勉強すればするほど味が出る「するめ」のような法律(もちろんいい意味!)であることを実感しました。

 たとえば労働契約法7条、10条の但し書きで就業規則と特約を定めた個別契約との関係が定められています。一言でいえば、その特約は最低基準違反(就業規則)でない限り、優先させる旨の規定です。一見、当たり前のことが定められており、特段論ずべき問題がないようにも思えるところですが、さにあらず。例えば中途採用社員について、賃金その他労働条件を他の正社員と異なる厚遇で迎え入れることがあります。この場合、その者のために就業規則を別に定めることはなく、個別労働契約で済ませることが多いのではないでしょうか。

 景気あるいは本人業績が順調であれば何の問題もありませんが、最近のような急速な経済環境悪化に直面した場合、一般の正社員はもちろん、中途採用社員も含め、賃金等の引き下げを検討せざるを得ない局面が生じることとなります。この場合、一般の正社員については、就業規則の変更が合理的であり、かつその内容が周知等されているのであれば、変更内容が労働契約の内容となることが労働契約法10条で確認されています。

 それでは特約を結んだ中途採用社員の労働条件を就業規則変更で行うことができるのでしょうか。これについて、前述のとおり契約法10条但し書きが特約を優先する旨、規定していることから、就業規則変更による一律的対応が取れないということになります。

 そのような問題が生じることを念頭に置きながら、中途採用社員等の個別契約管理を周到に行うことを、労働契約法が求めていることになります。労働契約法の奥深さがわかる一例です。

 その他、労働契約法には様々な実務対応上の課題があります。同課題と実務対応上の留意点を3時間にわたって峰隆之弁護士とともに解説させていただいたものです。

 講演をご静聴いただいた企業人事の皆様、そして有田先生ありがとうございました。また山崎、須田両先生には、帰りの列車含めてお付き合いいただきました。感謝する次第です。それにしましても、松本の10割そばと「大信州」は美味でした(笑)。
 

2008年11月11日火曜日

労働行政の予測可能性について

 たとえば自動車を運転していて、一時停止を無視したことを警察官に現認された場合、違反切符が切られることに違和感を覚えることは、まずないと思われます。

 これに対し、労働行政の予測可能性はどうでしょうか。一例を挙げれば、製造工場における派遣請負区分基準の指導が挙げられます。全国展開している会社であれば、全く同じ運用管理を行っているにもかかわらず、A県では厳しい指導され、B県では何のお咎めもなかったという話題に事欠かないのではないでしょうか。同様にサービス残業、管理監督者についても、同様の問題が指摘されます。

 これらの経験から、労働行政の予測可能性が低いとの感を持たれている方が多いのではないでしょうか。この予測可能性の低さは、結局のところ、法の実効性を失わしめるものであり、健全な法治国家として望ましいものではありません。今後、この予測可能性を明確にしていくことが、労行政全般の問題として指摘されるところと思われます。などと都内某所で生意気な話をさせていただきました。

 愚論をご清聴いただいた上、美味しい中華を御馳走いただきましたA大のF先生、門下生の皆様、ありがとうございました。

2008年11月9日日曜日

U35のための労働法?

 娘が通う保育園の父母会レクリエーションでK公園へ。焚き火で芋が焼かれていくのを眺めながら、同世代若しくは少し上のお父さん達と世間話に花を咲かせる。その中で、35歳程度を境に大きなジェネレーションギャップがあるのではないかとの話題。例えば調理人の世界では、35歳以上の世代は比較的、厳しい修行時代を経て、職業経験を積んでいる一方、それより下の世代は職業人生も含め「ゆとり教育」世代ではないかとのこと。その結果、良い面がある一方、メンタルヘルスなど難しい問題を抱えている者が増える傾向があるとのご指摘あり。データを踏まえたものではない、単なる世間話にすぎないが、周りを見渡してみると、頷ける感なきにしもあらず。
 それを前提として、U35への企業実務対応上のポイントは、普段U35世代と直接の対話に乏しい上級管理職層への教育ではないかと仮説を立ててみる。久し振りの焚き火に影響されてか、つらつらと世代傾向に対応した労働法なるものを妄想した次第。

 そのような妄想から現実に引き戻してくれるのは、U4の腕白ぶり。U4からの「攻撃」に伴う災害性疾病について、何らかの補償制度が創設されえないか?(嘘)。

 

 

「変更解約告知」の混乱ー関西金属工業事件ーほか

 関西金属工業事件 大阪高裁平成十九年五月十七日判決
事案の概要・判決内容・評釈については、金井幸子氏判例評釈(名大法政論集)が大変、有益ですので、こちらをご覧ください。

 同事件では、会社側は深刻な経営難に伴い、いったん社員を退職させた上で、新たな労働条件(賃金額が4割減など)による雇用契約の募集を行いました。同募集に応じた社員すべてを再雇用するものではない(6名リストラ予定)ことを当初から明らかにしておりましたが、同退職・募集申込(これを「変更解約告知」と称している)に応じなかった社員10名全てを解雇しています。
 この解雇の効力が争われたものですが、そもそもここで会社側が主張するものが、「変更解約告知」といえるのかが問題となりました。というのが、従来から論じられてきた変更解約告知は、労働条件変更に伴う雇用維持か、あるいは変更に従わないことによる解雇かいずれを従業員側に選択させることに大きな意義がありました。つまり、変更であれば雇用維持されることが前提でしたが、本件では変更に応じたとしても、雇用が維持されるか否か定かではないところに大きな特徴があります。

 同高裁判決では「変更解約告知」であることを明確に否定しないものの、整理解雇と変更解約告知を分けて論じることはできないと指摘した上で、専ら整理解雇法理に照らして、あてはめを行い、本件解雇を無効としました。主に4要件でいうところの人選基準に問題がある(6名で十分であるにもかかわらず、10名を解雇した点)としたものです。

 結論は良いとしても、この会社の対応を「変更解約告知」と称してよいのか、違和感を覚えます。本事案はそもそも整理解雇であり、その中に従業員の労働条件変更が含まれていたと位置づけるのが適切ではないでしょうか。本件の「変更解約告知」と称する会社側対応は、専ら解雇回避措置のところで考慮すれば、それで足りるものと思われます(但し労働条件引き下げによる雇用維持に向けた対応が、解雇回避措置として高く評価されるかは疑問。やはり希望退職募集等が重視されると考える)。
 とすれば、本件は人選基準を明らかにせずに、労働条件変更を拒絶したもののみを解雇対象者として選定した合理性を問えば、結論を同じく導き出せることとなります。

 裁判所の判断基準はさておき、本事案のようなケースにおいて、会社側がどのような対応を取るのが適切であったのかが、課題として残ります。いずれにしても本事案のように労働条件引き下げと整理解雇を同時に行おうとするのは適当ではなく、事前に周到な準備の上で、対応を検討しなければならないことが明らかにされた点が実務的にも参考になります。

 話は変わりまして、吉祥寺で久し振りに京都町内会バンドのライブを楽しみました。バンド結成から12年、前身を含めると20年。あまりの長い付き合いに感慨無量(笑)。

2008年11月8日土曜日

変更解約告知に実務的意義があるか?

 労働法学の一つの潮流として、人事労務管理の個別化への対応があるように思われます。たしかに周りを見渡してみても、一定の専門知識・技能を有するものが中途採用され、賃金などの労働条件が個別決定される例は年々、増加しているのではないでしょうか。同社員については、従来のような就業規則をもって労働条件を集合・画一決定するものではなく、個別労働契約によって決定される例が多いものです。
 仮に会社の経営環境変化に伴い、賃金等の労働条件引き下げを行いたい場合、上記中途社員の労働条件について、どのような変更方法が考えられるところでしょうか。就業規則変更では不可とすれば、個別に変更同意を取るほかないことになります。では、この変更同意が取れない場合については、どのような対応が考えられるのか。
 その場合は「変更解約告知」が一つの選択肢となるか否か、最近とても関心をもって勉強しておりました。変更解約告知の定義は難しいのですが、さしあたりJILのデータベース情報が大変、参考になります。

 しかしながら、実務において、どの程度そのニーズがあるのか、よく分からないところがあります。そもそも、中途採用社員の賃金制度に成果主義賃金制度等を導入しているのであれば、本人成績に連動した賃金支給で足りることとなり、何も労働条件の変更自体が不用です(なお本人が成績維持している場合は、賃金制度設計によるが、通常は従前どおりの賃金を支給する他なし)。また有期雇用契約であれば、期間終了まで従前どおり賃金支給するとしても、それ以降は期間満了による雇止めが可能になります(有期契約が反復更新、あるいは雇用継続を期待させる言動等がみられる場合は別)。
 実際のところ、変更解約告知がどの程度、実務的に使われる可能性があるのかどうか。今現在、私が抱えている大きな問題関心の一つです。
 

2008年11月7日金曜日

平成20年度社労士試験合格

 今年の夏休みは、毎年恒例のニセコ北大クールセミナーにも行かず、妻の里帰りにも同行せず、家でせっせせっせと試験勉強をしておりました。その苦労が報われ、無事、社労士試験に合格いたしました。今月中に手続きが済めば、来月早々から社会保険労務士という肩書を新たに持つことになります。これから、この資格と良い付き合いができるよう、日々切磋琢磨してまいる所存です。今後ともご指導の方、よろしくお願いいたします。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/11/h1107-1.html (社労士試験について 厚労省HP)

2008年11月6日木曜日

平成20年派遣法改正案の動向

どうする、どうなる派遣法改正案

 今、労働法制において最も注目されているのは、派遣法改正案に他なりません。
11月4日、政府は派遣法改正案を閣議決定し、本国会に政府案を提出いたしました。政府案として取りまとめるまでが大変な難産でしたが、ここから先もその苦難の道に変わりはありません。むしろ更なる断崖絶壁の山道をのぼっていく運命のようです。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/11/h1104-1.html 派遣法改正法案要綱(政府案)
http://www.roudou-kk.co.jp/archives/2008/09/20924.html 同改正法案の簡単なコメント

 現在、会期中の臨時国会は11月30日を会期末として予定しています。3週間以上残されてはいますが、衆参ねじれ状態の中、スムーズに法案審議、可決が進められていくかは定かではありません。与党側は民主党案に対し一定の譲歩を行い、修正案を取りまとめることにより、会期末までの成立を目指していたものと思われます。現に民主党案と政府案を比べてみると、日雇い派遣規制の対象を「30日」(政府案)とするか、「2か月」(民主党案)とするかが目立った相違点であり、その他の点については、さほど大きな対立点はないように思えます(労働法の視点からみると、民主党案にはその他、派遣先への労組の団交権保障、派遣先との均等待遇など目を引く点はあります)。
http://www.dpj.or.jp/news/?num=13148 民主党派遣法改正法案
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_4cfb.html (濱口桂一郎先生コメント)

 しかしながら民主党は党内で取りまとめていた民主党案をそのまま国会に提出するのではなく、他の野党との協議の上、改めて政府案への対立法案を提出するかまえを見せています。
http://www.47news.jp/CN/200811/CN2008110601000745.html 共同通信2008.11.06

 他野党は日雇い派遣規制のみならず、登録型派遣の全廃などを求めており、政府案との隔たりは大きいものです。民主党が他野党との「共闘」を意識すればするほど、本国会における派遣法改正案の成立は難しいと思われます。

 仮に派遣法改正案が本国会で先送りをされた場合はどうでしょうか。まず年末、年初の解散総選挙があった場合は、政府案(民主党等が対立法案を提出した場合は、同対立法案含む)は廃案となります。また改めて、閣議決定の上、出しなおす必要が生じますが、その際、どの政党が「与党」であるかは「神のみぞ知る」こととなります。
 これに対し、解散総選挙が先送りされた場合は、次の通常国会において、改めて審議されることとなりますが、先の構図がそのまま引き継がれます。

 審議がこの調子で先送りされ続けた場合は、最高裁が松下PDP事件、いよぎんスタッフサービス事件に対する判断を示す可能性が出てきます。この場合、同上告審判決が立法にも、相当程度影響を及ぼすものと思われるところです(最高裁がそのような「使われ方」を嫌って、あえて判決を先延ばしする可能性もあるとは思いますが・・)。

 いずれにしましても、派遣法は本年末から来年にかけて、大きく変わっていく過程にあることは間違いがなさそうです。
 

2008年11月5日水曜日

職場内の飲酒を伴う会合後の災害は通勤災害か?

 国・中央労基署長(通勤災害)事件 東京高裁H.20.6.25(労判960-16)

事案の概要
  総務部門次長が、同部門主催の会社内会合終了後、帰宅途中に地下鉄入口下り階段から転落し、死亡したことが労災法上の通勤災害に該当するか否か争われた事案。労基署は通勤災害に該当しないとし、不支給決定処分としたところ、遺族が同不支給決定処分の取り消しを求めたもの。1審は遺族の請求を認め、不支給決定処分の取り消しを命じた。これに対して国側が控訴。

判決 原判決取り消し
 
コメント 
 職場内で飲酒を伴う会合がなされることは、以前に比べて少なくなったとはいえ、今なお多くの企業でみられるところです。本事案では、5時間近く続いた会合(17時ー22時)終了後、帰路についた総務部門次長の転倒事故が「通勤災害」に該当するか争われました。
 1審はこの会合すべてを「業務」と判断しました。同会合において、被災者が総務次長として、従業員からの様々な相談・不満を聞いていたことから「業務性」を認めたものです。これに対して、控訴審では一転して判断を異にしました。17時から19時前後までの会合までは業務性があるとしたものの、19時から22時までの会合は業務性のある参加ではないと判示しています。その根拠として、裁判所は①被災労働者が通常19時には退社していること、②開始時刻からの時間の経過等から、19時前後には本件会合の目的に従った行事は終了していたとするものです。

 これについて、1審判示の視点からみると、19時以降も従業員からの相談対応等を行っており、19時で「業務」と切断されることは相当ではないとの見解も成り立ちえます。控訴審では、この指摘に対して特段答えていませんが、察するに飲酒を伴う会合という特殊性を前提にすれば、2時間程度で業務と切断するのも、やむを得ないと考えます。

 自らの乏しい経験を思い起こしてみても、飲酒を伴う会合は通常2時間程度で終わるものであり、それを超える場合は、私的関係を含めたお付き合いの色彩が強まると思われます。もちろん2次会、3次会のかなり煮詰まった段階(酩酊状態)で、仕事の話をすることもありますが、それをすべて「業務」とし、終了後の帰路をすべて「通勤災害上のリスク」と扱えるかどうかは違和感があります。飲酒を伴う会合については、業務性が認められたとしても2時間程度とするのは、社会通念に照らして相当ではないでしょうか。
 また本件においては、控訴審段階で国側が新証拠を提出し、被災者が相当な酩酊状態にあったことが立証されています。強度の酩酊状態に陥っていた段階での転倒事故が、通勤災害上の保護対象となるか否かも疑問を感じるところです。したがって、控訴審の認定事実を前提とすれば、本判決の結論は相当と考えます。

 本判決が提示した別の論点として、国側の新証拠提出時期の問題があります。控訴審段階で新証拠提出が許されるのか、そもそも国側の処分において前提とされた事実とは異なる事由を、訴訟段階で持ち出すことが可能かどうか。行政訴訟法との関係で更に踏み込んだ検討が求められる課題ではないかと思われます。
 

2008年11月4日火曜日

採用担当者への法務面からの支援を考える

 私は以前、新卒採用業務のお手伝いをしたことがある。その際、採用部門が求人募集先の選定、説明会開催の段取り、応募者へのフォロー、採用選考、内定通知、内定者へのフォロー、内定式そして入社式、入社後研修等々、無数の業務に追われている姿を目のあたりにして、その多忙ぶりに大変驚かされた。そのうえ新卒採用であれば、「お兄さん」「お姉さん」的な親しみやすさを持ちつつも、社内調整も的確に行える能力が必要とされる。どの会社もリクルーターに優秀な人材が配置される傾向があるが、その業務の多忙さ、難しさからして納得させられた次第である。

 以上のとおり、ただでさえ難しい業務であるところに、最近のコンプライアンス問題が採用業務にも持ち上がってきている。労働法のルールは明快さに欠ける面があり、何が正しいのか答えが一つでない問題が多い。たとえば、採用面接時のヒアリング事項がある。厚労省はあるパンフレットにおいて、採用面接時に聞いてはいけない事項を示している。その中には、本籍地など納得できるものが多い反面、「尊敬する人」「愛読している新聞、雑誌」など一般によく質問される事項も含めてヒアリングを行わないこととされている。同パンフのみをみれば、これら事項はいずれも「聞いてはいけない」ということになろうが、企業側として、新卒採用では、本人の適性を幅広い視点から見極める必要がある。その見地から「尊敬する人」等をヒアリングすることは、職務関連性を有する質問にあたると解することが一概に合理性に欠けると思えない。

 このようにTPOに応じて、対応を検討せざるを得ないところに人事労務の難しさそして奥深さがあると感じるところではあるが、多忙にして人事労務の専門家ではないリクルーターにとってみれば、わかりにくいことこの上ないところとも思われる。また限られた時間の中、選考・内定などの手続きを進めていかなければならない担当者へのコンプライアンス上の支援はいかにして行うべきか。Q&Aなどの事例集作成など有益な手段を積み上げていかなければならないところ。今後の大きな課題の一つである。

2008年11月3日月曜日

退職手続きの違法性とは?-ゴムノイナキ事件判決ー

 ゴムノイナキ事件(大阪地裁平成19.6.15 労判957-79)
(事案) 勤務態度不良を理由とした業務指導の過程で退職した社員について、会社側が「自己都合」退職を前提に退職金、失業保険給付手続きを行ったことが違法とされ、会社都合退職による退職金および特定受給資格に基づく失業保険給付との差額分支払を命じた例(控訴後和解)

(コメント)結論・理由ともに反対
 退職勧奨自体はこれまでも、その回数・頻度あるいはその言動等が不相当である場合、違法であるとされ、損害賠償の対象とされてきた。これに対して、上記事案では、退職勧奨の態様は問題ではないとされる一方、退職の手続きに違法性があるとされた珍しい例。損害賠償として、本来「会社都合」で退職手続きを講ずべきであったとして、差額退職金及び失業保険(特定受給資格)の支払を会社に命じている。

 よくわからないのが、会社側が「自己都合」で退職手続きを処理し、退職金・失業保険手続きをとったことが、何故、損害賠償の対象となる「違法性」を帯びるのかという点。本判決の認定事実によれば、会社側の退職勧奨に態様上、問題はなかったとされており(むしろ「具体的かつ丁重な」指導であったと評価されている!)、退職事由が「辞職ないし合意退職」であることに間違いはない。

 加えて本件についていえば、本人の勤務成績不良に伴う指導が契機となり、退職したものといえる。たしかに純然たる私的理由による退職ではないとしても、同退職手続きを「会社都合退職」で行うべきとする違法性があるといえるのか。そもそも、何が違法であるのか、判決文からは定かではない。強いて考えるとすれば、労働契約に付随する適正に「退職手続き」を行うべき配慮義務とでもなるのか。

 また退職金の制度設計は、基本的に会社側にゆだねられている。いかなる場合に会社都合、あるいは自己都合で退職金を支給するべきかについても同様である。本判決では会社側の内規、過去の運用経緯などを検証することなしに一足とびで、本件の退職は会社にとってもメリットがあった等とし、会社都合退職金を支給すべきであったとする。しかしながら、前述の内規・運用経緯を評価することなしに、このような判断がなされるべきか大変、疑問を感じる。

 最後に特定受給資格についても、本件がこれに該当するか否かは、はなはだ疑問。ハローワークの運用においても、同種事案であれば、おそらくは特定受給資格としないのではないか。その上、同失業保険手続きにあたり、従業員自体も退職事由を記載できる仕組みとなっており、労使の対立があれば、ハローワークが最終決定を行うこととしている。とすれば、会社側の失業保険手続きはその一部に過ぎず、退職事由の記載をもって「損害賠償の対象たる違法性」があるのか、改めて疑問の念を強くする。

2008年11月1日土曜日

「非正規レジスタンス」読了

石田衣良「非正規レジスタンス」(文藝春秋 2008.8)
 新聞記事をコピー&ペーストして、小説が書かれた印象ぬぐえず。確かに、それぞれのエピソードで非正規雇用等の抱える問題の深刻さ(母子家庭、ネットカフェ難民など)は描かれているが、いずれも当事者らの心境や背景がずしんと腹に落ちてくる感なし。最近、読み返していた鷺沢萠、高村薫などの一連の作品群と比べてしまうからかもしれない。
 いずれにしても、現在進行形の問題という困難さを克服して、いわゆる「格差問題」を的確に描き出す力量をもった小説・映画の登場が待たれる。視野を外国に転じれば、ケン・ローチ監督の一連の作品にその可能性が見出されるのではないだろうか(近作として「この自由な世界で」)。

生活者の利便と営業時間規制

 10月30日開催の経団連労働法セミナー(関西)を受講。テーマが労働時間問題のためか、参加者多数。お出しいただいた弁当のライス量の少なさに違和感を感じたのは私だけか?。

 シンポジウムで登壇された神戸大学大内先生に感服。一番最後に「生活者の利便 対 労働者の保護」の問題状況をさりげなく指摘された手際の良さにほれぼれする。この指摘が「営業時間規制」をはじめとした経済規制につながる可能性を含んでいることに会場の中で何人、気がつかれたのか興味あり(それにしても、大内先生ご自身が「営業時間規制」について、どのような見解をおもちなのだろうか。いずれご見解をお伺いしてみたい)

 和田肇先生が紹介された90年代以降のドイツ営業時間規制の展開について、関連文献調査の要がある。

2008年10月31日金曜日

京都北山で考えたことー「雇用継続の期待権」解消の費用?ー

 初めて京都の北山を散策。色づき始めた府立植物園の紅葉を楽しみながら、場違いな問題をつらつらと考えてみる。
有期雇用契約を反復更新した場合に生じるとされる「雇用継続の期待権」は、使用者側の事情で解消することが可能であるのか。可能であるとしても、なんらかの代償措置を講じる要がないのか。そして、仮に代償措置として金銭給付を行うとして、その算定方法をどうするか。

 直感的には、労働局斡旋制度、労働審判などの解決事例にヒントが隠されているのではないかと考えている。今後、更なる検討を要する課題である。